カエルの代謝性骨疾患(MBD)
最近は様々な種類のカエルがペットとして流通するようになり、
カエルを飼育されている方も年々多くなってきていると感じています。
今回は飼育環境やフードの問題によって発生する、
代謝性骨疾患(Metabolic Bone Disease : MBD)について紹介していこうと思います。
〈症状〉
カルシウムが不足することで、骨の変形が認められることがあります。
また、カルシウムは体内で筋肉や神経の働きにも関与しているため、
消化管の停滞による食欲不振、便秘などの症状や、痙攣や発作などの神経症状が認められることもあります。
〈原因〉
自然下では様々な種類の昆虫や動物を捕食し、様々な栄養をバランスよく摂取しています。
また、太陽光に含まれる紫外線をあびることで、体内でビタミンD3が合成され、カルシウムの吸収が促進されます。
飼育下では、特定の種類のフードしか与えていない、紫外線灯を設置していないなどの、
飼育環境やフードの問題によって、体内のカルシウムが不足してしまい、MBD を発症してしまいます。
〈診断〉
レントゲン検査で骨の変形や吸収像が認められると、MBD が強く疑われます。
血液検査で血中カルシウム濃度の測定ができればいいですが、小型のカエル類では血液検査の実施が難しいことが多いため、
臨床症状、飼育環境、フードの種類、カルシウム・ビタミン類のサプリメント使用の有無なども含め、
総合的に診断していく必要があります。
これは MBD が疑われた、イエアメガエルのレントゲン画像です。
全体的に骨の構造が菲薄化しており、特に前肢では骨の構造が確認できない状態となっています(赤丸)。
〈治療〉
軽度の場合は飼育環境やフードの変更で様子を見ることもあります。
中度~重度の場合は、カルシウム吸収促進のための内服薬や注射の投与を行う必要があります。
重度の骨変形がある場合、治療しても骨が元には戻ることはなく、
自力採食が困難な場合はそのまま亡くなってしまうこともある為、早めの治療が大切になります。
カエルを飼育されている方で、カルシウム類のサプリメントを使用されている方は多いと感じますが、
一方で紫外線灯を使用されている方はまだまだ少ないように感じます。
紫外線灯を使用されていない方は、是非設置を検討していただければと思います。