症例紹介
その他小動物フクロモモンガ
フクロモモンガの乳腺癌
フクロモモンガは有袋類に属する動物です。有袋類における腫瘍性疾患の発生は稀といわれていますが、
メスのフクロモモンガにおける乳腺腫瘍の発生が何例か報告されています。
今回はそんなフクロモモンガの乳腺腫瘍(乳腺癌)について紹介していこうと思います。
〈症状〉
フクロモモンガには育児嚢という子育てのための袋があり、その中に乳頭が2対あります。
乳腺腫瘍ができると育児嚢の中にしこりができます。
腫瘍が小さいうちは特に症状がでることは無いですが、
大きくなってくると、自壊して出血や排膿を伴うこともあります。
また、腫瘍が肺に転移すると呼吸症状が認められる場合もあります。
〈原因〉
犬の乳腺腫瘍は未避妊メスでの発生が多いですが、オスにも発生します。
フクロモモンガの場合はメスのみで報告されています。
また、報告されている症例のすべてが悪性と診断されています。
〈診断〉
触診で腹部にしこりがないか確認します。
確定診断には細胞診や病理組織検査が必要となります。
また、全身状態の確認や腫瘍の転移の有無を確認するために、
血液検査やレントゲン検査も必要となります。
〈治療〉
外科的な摘出が必要となります。

これは乳腺腫瘍の手術をするために、全身麻酔をかけたフクロモモンガのお腹の写真です。
毛刈りをすると、育児嚢の中にしこりがあることがわかります(赤矢印)。
しこりは育児嚢の中にできるため、日常生活では見えにくいことが多いため、
気づくのが遅くなってしまうことも多々あります。
日ごろからよく体を触って、何か変わったところがあれば、
早めに来院を検討して頂ければと思います。
