フクロモモンガの後肢絞扼
小動物では毛布などの布製品の繊維が手足に絡まってしまうことがあります。
今回は、フクロモモンガの繊維による絞扼壊死について紹介していこうと思います。
〈症状〉
繊維などが手や足に絡まったことにより絞扼が生じると、
手足の腫れや歩行異常などが認められる場合があります。
また、絞扼してから時間が経ってしまうと組織の壊死が生じる場合もあり、
自咬してしまうと、さらに傷口が悪化してしまう場合もあります。
〈原因〉
多くの場合では、ケージ内に入れている布製品の繊維が体に絡まることによって起こります。
このため、ケージ内に入れる布製品にほつれがないかどうかなどを確認する必要があります。
〈診断〉
特に手足など、体のどこかに糸が絡まっていないかを身体検査で確認していきます。
また、絞扼してから時間が経過していると、絞扼部から壊死が起こる可能性もあります。
これは繊維による絞扼によって後肢の壊死を起こし、自咬症も併発したフクロモモンガです。
絞扼と自咬によって、後肢が黒色壊死しています。
〈治療〉
絞扼部位の繊維を除去する必要があります。
絞扼してから時間が経過している場合では、組織の壊死が進んできていることもあり、
その場合は壊死部分を手術で摘出する場合もあります。
先ほどのフクロモモンガでは壊死した後肢の温存は難しく、
二次感染のリスクもあったため、後肢の断脚術を実施しました。
ケージの中に入れる布製品については、糸のほつれが無いかなどに注意をする必要があります。
また、手足に糸が絡まった状態が長引くと壊死してしまうことがあるため、
糸が絡まってとれない、糸は見えないが手足が一部腫れているといったことがあれば、
早めに来院を検討していただければと思います。