症例紹介

ウサギ

ウサギの胸腺腫

ウサギは犬や猫に比べると胸腔が狭く、呼吸器疾患による呼吸状態の悪化を引き起こしやすい動物です。

今回はウサギの呼吸器疾患の一つである、胸腺腫について紹介していこうと思います。

 

〈症状〉

軽度では無症状の場合も多く、元気や食欲の低下のみが認められることもありますが、

症状が進行すると腫瘍が肺や血管を圧迫することにより、呼吸促拍や瞬膜突出が認められることがあります。

重症化すると呼吸困難に陥る可能性もあり、注意が必要です。

 

〈原因〉

胸腔内には胸腺と呼ばれる免疫に関与する臓器が存在します。

多くの動物では成長に伴い退縮していきますが、ウサギは大人になっても遺残しており、

まれにこの胸腺が腫瘍化することで発生します。

腫瘍化してしまうはっきりとした要因については不明です。

 

〈診断〉

胸腺腫の診断には、レントゲン検査やエコー検査で胸腔内の腫瘤病変を確認し、

細胞診や組織生検を行って確定診断していきます。

 

これは健康なウサギの胸部のレントゲン画像です。

胸腔内の中心部に心臓が確認できます。

 

一方、こちらは胸腺腫のウサギのレントゲン画像です。

胸腺の腫大により、心臓頭側に不透過領域(赤矢印)が認められます。

 

〈治療〉

ステロイドの内服が必要となります。

ステロイドの投与によって腫瘍が縮小することが多いですが、

投薬を休止すると胸腺腫が再度増大することも多いため、長期的な投薬が必要となります。

 

先ほどの胸腺腫のウサギで、ステロイドによる投薬を行って4ヶ月経過した後の画像です。

心臓頭側の不透過領域(赤矢印)の範囲が縮小し、胸腺腫が縮小していることがわかります。

 

家のウサギさんの呼吸の様子がおかしいなど、何か気になる事があれば、

一度診察に来ていただければと思います。