症例紹介

チンチラの腸重積

どのような動物種でも、慢性的な下痢は体調を悪化させる要因となります。

今回は慢性的な下痢に続発することの多い、チンチラの腸重積について紹介していこうと思います。

 

〈症状〉

下痢や肛門からの出血、消化管ガスの貯留による腹囲膨満などが認められ、

肛門から腸の一部が逸脱してしまっていることもあります。

元気や食欲も低下し、ぐったりしていることが多いです。

これは腸重積のチンチラの写真です。

肛門から腸管が出てきてしまっていることがわかります。

 

〈原因〉

寄生虫の感染による慢性的な下痢から腸重積を引き起こしてしまうことが多いです。

その他にも、異物などによる腸閉塞に続発して腸重積を起こす場合もあります。

 

〈診断〉

腹部のエコー検査を実施し、腸重積が無いかを確認していきます。

肛門から腸がでてきている場合、類似する病気に直腸脱があり、

突出している腸管や肛門の状態を確認し、直腸脱か腸重積の確認をしていきます。

腸重積による閉塞が無いかどうかを確認するために、消化管造影レントゲン検査を実施する場合もあります。

また、下痢を起こしていることが多いため、便検査で寄生虫が検出されないか確認していきます。

 

〈治療〉

腸重積の場合では開腹手術による整復が必要となります。

これは腸重積のチンチラの手術中の写真です。赤丸で示している部分が腸重積を起こしている部位です。

腸の一部が後ろの腸に引き込まれ、重なってしまっていることがわかります。

腸重積を整復した後の写真です。重積を起こしていた腸が赤くなっていることがわかります。

腸が壊死してしまっていることもあり、その場合は壊死した腸管の切除と腸吻合が必要となります。

 

腸重積を起こしている場合、衰弱が進んでいることが多いため、治療を行っても亡くなってしまうことが多く、

救命率を向上させるためには早期発見と早急な手術が必要となります。

腸重積では緊急手術が必要となるため、便がでない、肛門から腸が飛び出しているなどの症状がある場合は、

しばらく様子を見るようなことはなさらず、すぐに来院を検討していただければと思います。