ヘビの肺炎
爬虫類は不適切な飼育環境によって体調を崩してしまうことも多く、
季節の変わり目などの温度変化には注意が必要となります。
今回はヘビの肺炎について紹介していこうと思います。
〈症状〉
上を向いて呼吸する様子や、開口呼吸が認められます。
また、肺や気管からの分泌物が口腔内に貯留し、涎や膿がでてくることもあります。
重症化すると、食欲不振や体重減少などがみられることもあります。
これは呼吸器症状のみられるカーペットパイソンです。
上を向いて、苦しそうに開口呼吸をしています。
こちらは肺炎のボールパイソンで、涎が出てきていることがわかります。
〈原因〉
細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの病原体が直接の原因となっていることが多いです。
さらに、不適切な飼育環境や温度管理によってヘビの免疫力が低下してしまうと、
これらの病原体に対する感染症の発生を助長させてしまいます。
また、多頭飼育されている方の家では病原体を保有するヘビをきっかけに、集団感染を起こす場合もあります。
〈診断〉
レントゲン検査で肺の異常がないか確認します。
また、気管内の分泌物を採取し、病原体の培養検査や遺伝子検査を行うこともあります。
その他にも、全身状態の確認のために血液検査などの検査も追加で実施する場合もあります。
これは流延が認められたボールパイソンのレントゲン画像です。
本来は黒く見えるはずの肺が白っぽくなっており、肺炎が疑われます。
〈治療〉
抗生剤の投与やネブライジング、気管洗浄などの他に、点滴や強制給餌などの支持療法も必要に応じて行います。
また、飼育環境に不備がある場合は改善してもらう必要があります。
しかし、重症化した個体では治療に反応せずに亡くなってしまうことも多く、致死率の高い病気です。
これは肺炎で亡くなったボールパイソンの肺の画像です。
肺炎による激しい炎症のため、肺が部分的に赤くなっていることがわかります(赤丸)。
肺炎で亡くなった別のボールパイソンの肺の画像です。
先ほどの肺よりも炎症がひどく、全体的に赤みを帯びています。
肺を切開したところ、肺の内部に膿が溜まっていました。
このような状態では呼吸困難になってしまい、亡くなってしまったと考えられます。
開口呼吸や涎が出ているなどの、肺炎が疑われるような症状がある場合は、
早めに来院を検討していただければと思います。