症例紹介

犬の乳腺腫瘍

犬でも乳腺腫瘍、いわゆる乳がんが発生することがあります。

今回は犬の乳腺腫瘍について紹介しようと思います。

 

〈症状〉

乳腺にしこりが発生します。数mmほどのものから、10cm以上の大きなしこりが発生することもあり、

表面が自壊すると、出血や排膿を伴うこともあります。

犬で発生する乳腺腫瘍は、半数ほどが良性腫瘍とされていますが、

時間の経過とともに悪性腫瘍になってしまうこともあり、注意が必要となります。

 

〈原因〉

未避妊の中高齢のメスで発生することが多いです。

乳腺腫瘍は初回発情前に避妊手術を実施することで、発生率を0.5%まで抑えることができるといわれています。

このため、乳腺腫瘍の予防には若齢期の避妊手術が大切になります。

 

〈診断〉

触診で乳腺のしこりがないか確認します。

確定診断には病理組織検査が必要となります。

 

〈治療〉

外科的な乳腺摘出手術が必要となります。

また、未避妊の場合は避妊手術も同時に実施することが多いです。

 

写真のワンちゃんはお腹にできた大きなしこりを主訴に来院されました。

高齢の未避妊メスで、しこりが乳腺に発生していたため乳腺腫瘍が疑われ、

腫瘤病変の摘出手術と避妊手術を実施しました。

 

写真は術後、抜糸した様子です。傷口はきれいに癒合しています。

摘出した腫瘤の病理組織学的検査を実施したところ、乳腺腫という良性腫瘍であることがわかりました。

悪性腫瘍ではなかったですが、新たな乳腺腫瘍の発生には注意が必要となります。

 

皆さんも、おうちのワンちゃんの体をよく触ってみて、

なにか異常があれば、はやめに来院を考えていただければと思います。

どんな病気も早期発見、早期治療が大切です。