症例紹介

両生類

ツノガエルの精巣腫瘍

犬や猫で腫瘍の発生があるように、カエルなどの両生類でも腫瘍が発生する場合があります。

今回はツノガエルの精巣腫瘍の症例を紹介させてもらいます。

 

〈症状〉

カエルは体腔内に精巣が存在するため、腫瘍が小さいとなかなか気づきにくく、

カエル本人も無症状であることが多いです。

しかし、腫瘍が大きくなってくると精巣腫瘍が他の臓器を圧迫し、

元気食欲の低下がみられたり、お腹が膨らんでくるといった症状がみとめられる場合もあります。

 

〈原因〉

加齢や遺伝的要因など様々な原因が考えられますが、カエルの精巣腫瘍の報告自体が乏しいこともあり、

今のところはっきりとした原因はわかっていません。

 

〈診断〉

レントゲン検査やエコー検査で、体腔内の腫瘤を確認します。

確定診断には、細胞診や病理組織検査が必要となります。

 

〈治療〉

外科的な摘出が第一選択となります。

写真のツノガエルは元気食欲の低下と、お腹に硬いものが触れるとのことで来院されました。

 

レントゲン検査を実施したところ、明らかな異物は見当たらず、

左体腔内に腫瘤病変を疑う不透過領域(赤丸)が確認されました。

腫瘍性病変の可能性が強く疑われたため、探査開腹手術を行うことになりました。

 

全身麻酔下で開腹手術を行い、体腔内を確認したところ、

胃や腸に癒着した巨大な腫瘤が確認されました。

 

癒着していた消化管を腫瘤から剥離し、腫瘤を摘出しました。

手術後は元気や食欲も戻り、無事に退院できました。

 

摘出した腫瘤の病理組織検査を実施したところ、精上皮腫と診断され、精巣の腫瘍であることがわかりました。

ツノガエルの腫瘍の報告は少なく、どのような経過をとるか未知数な部分もある為、

腫瘍の再発や転移がないか、今後も注意して経過を観察する必要があります。