症例紹介

猫の心タンポナーデ

人間も動物も、加齢とともに心臓病を発症してしまうことがあります。

今回は心タンポナーデが認められた猫について紹介していこうと思います。

 

〈症状〉

心臓の動きが弱まることによって、運動を嫌がったり、

運動するとすぐに疲れるような症状(運動不耐性)がみられることが多いです。

また、腹水や胸水が貯留することによって、呼吸困難や元気食欲の低下が認められる場合もあります。

 

〈原因〉

心臓は心膜と呼ばれる膜に包まれており、心臓と心膜の間には心嚢水が貯留しています。

この心嚢水によってスムーズに心臓が拍動し、心臓を衝撃や感染から保護してくれます。

しかし、心機能の低下や出血、腫瘍など様々な要因で心嚢水が過剰に貯留することによって、

心臓の動きが制限されてしまっている状態を心タンポナーデといいます。

 

〈診断〉

レントゲン検査やエコー検査などを行い、心嚢水の貯留や心疾患の有無を確認します。

また、心嚢水を採取し検査することで、腫瘍や出血などがないか確認します。

 

これは健康な猫のレントゲン画像です。

赤丸で示している部位が心臓で、心臓周囲の黒い領域が肺になります。

 

一方こちらは心タンポナーデの猫のレントゲン画像です。

心臓(赤丸)が大きく拡張していることがわかります。

また、胸水の貯留によって胸腔内が白っぽくみえています。

心臓をエコーで確認すると、心臓(赤丸)周囲に黒い領域(赤矢印)があります。

エコーでは液体がある場所は黒く見えるため、心嚢水が過剰に貯留していることがわかります。

 

〈治療〉

心嚢水の穿刺処置を行い、心臓にかかっている負荷を軽減する必要があります。

また、心タンポナーデを引き起こした心疾患の治療も同時に必要となります。

 

先ほどの心タンポナーデの猫で、心嚢水と胸水を抜去した後のレントゲン画像です。

心臓が先ほどに比べ小さくなっていることがわかります。

この猫では心臓の収縮力が低下していたため、心臓薬の内服を始めてもらいました。

 

こちらは治療を始めて3ヶ月後のレントゲン画像です。

心嚢水や胸水が貯留してくる様子もなく、良好に状態を維持しています。

 

心臓の病気は生命の危機に直結しやすい病気です。

運動を嫌がる、疲れやすいなどの症状がある場合は心臓病の可能性もあるため、

気になる方は来院していただければと思います。