犬の巨大食道症
犬や猫で吐く症状がみとめられた場合、嘔吐と吐出に分類されます。
嘔吐とは胃の内容物を吐き出す症状で、吐出とは胃に届く前の内容物を吐き出す症状です。
今回は犬の吐出の原因の一つである、巨大食道症について紹介していこうと思います。
〈症状〉
食べたものが胃に届かず、未消化なまま吐きもどしてしまう吐出がみとめられます。
吐出によって十分な栄養を摂取できず、痩せてくることが多いです。
また、吐出したものを誤嚥してしまうことで誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうと、
呼吸困難や咳などの呼吸器症状がみとめられる場合もあります。
〈原因〉
巨大食道症は先天性、二次性、特発性に分類されます。
先天性はシェパードやラブラドールなどの大型犬での発生が多いとされています。
二次性では、甲状腺機能低下症や重症筋無力症などの基礎疾患によって巨大食道症を引き起こしてしまします。
特に基礎疾患が認められない場合は特発性に分類され、
国内ではミニチュア・ダックスフンドでの発生が多いとされています。
〈診断〉
レントゲン検査で食道の拡張があるか、誤嚥性肺炎がないか確認していきます。
また、巨大食道症の原因となりえる基礎疾患があるかを確認するために、
血液検査や超音波検査など他の検査もしていきます。
これは健康な犬のレントゲン画像です。
赤丸で示す場所が胸部の食道が存在する場所ですが、
通常は食道をレントゲンでは確認することはできません。
一方、こちらは巨大食道症と診断された犬のレントゲン画像です。
食道の拡張のために赤丸で示す領域が白っぽくなっています。
造影剤を飲ませてレントゲン撮影を行ったところ、
造影剤によって食道の拡張がはっきりと確認できます。(赤丸)。
〈治療〉
食事中と食後15~30分ほどは立位で保持し、食道内の食べ物が胃に流れやすくなるようにしていきます。
それでも誤嚥がひどい場合は胃瘻チューブの設置手術を行う場合もあります。
二次性では基礎疾患の治療によって食道の運動性が改善する場合もありますが、
特発性の場合は食道がもとの状態に戻る可能性は低く、
吐出による誤嚥性肺炎によって容態が急変する可能性があります。
おうちのワンちゃんで吐く動作がある場合、今回の巨大食道症をはじめとする
様々な病気の可能性が考えられるため、早めに病院に受診していただくことをお勧めします。