デグーの仮性歯牙腫(オドント―マ)
デグーはウサギと同じく前歯も奥歯も生涯伸び続ける動物で、歯に関連する病気の発生も多いです。
今回は歯の疾患の一つとして、デグーの仮性歯牙腫(オドント―マ)について紹介していきたいと思います。
〈症状〉
仮性歯牙腫は上顎の切歯や臼歯の歯根部が腫大することによって鼻腔内を圧迫してしまいます。
これに伴い、初期症状として鼻汁やくしゃみなどの症状が認められることがあります。
重症化すると呼吸困難に伴う開口呼吸が認められ、
空気を吸い込むことによって消化管内にガスが貯留し、腹部の膨満が認められることもあります。
〈原因〉
デグーは主食である牧草を食べ咀嚼することで、歯が自然に摩耗し適切な長さが保たれています。
しかし、牧草を食べずにペレットばかり食べるといった不適切な食事内容、あるいは外傷などによって
不正咬合や仮性歯牙腫が発生すると考えられています。
〈診断〉
レントゲン検査やCT検査によって、鼻腔と歯の状態を確認する必要があります。
これは健康なデグーの頭部のレントゲン画像です。
切歯と臼歯がきれいに嚙み合っていることがわかります。
こちらも健康なデグーの全身のレントゲン画像です。
腹部は消化管の内容物によって、全体的に白っぽく見えるのが通常の状態です。
一方、こちらは臼歯仮性歯牙腫が疑われたデグーのレントゲン画像です。
上顎臼歯の歯根部が鼻腔に到達しており、赤丸で示す箇所が白く不明瞭になっていることから、
仮性歯牙腫や骨腫瘍が疑われました。また、臼歯の不正咬合や、それに伴う下顎骨の変形も確認できます。
同じ個体の全身のレントゲン画像です。
呼吸困難に伴う開口呼吸によって、腹部に大量のガスが溜まることにより、
腹部が全体的に黒っぽく見えています。
CTで鼻腔を確認したところ、腫大した臼歯歯根部が鼻腔を圧迫していることがわかります。
〈治療〉
軽度のものであれば抗生剤や消炎剤の内服薬や点鼻薬を使用します。
また、酸素吸入によって呼吸器症状を緩和していくこともあります。
重度の呼吸困難が認められる場合は鼻円鋸術と呼ばれる、鼻に新たな呼吸口を作成する手術を行いますが、
手術後も手術部位が塞がらないように、定期的にケアをしてあげる必要があります。
開口呼吸や腹部が膨らんでくるなど、何か異常があれば早めに来院を検討していただければと思います。