症例紹介

爬虫類

カメレオンモドキの扁平上皮癌

爬虫類にも体表に腫瘤(しこり)ができることがあります。

多くは膿の塊である膿瘍であることが多いですが、腫瘍が発生する場合もあります。

今回は扁平上皮癌が発生したカメレオンモドキについて紹介していきます。

 

〈症状〉

右目の上に膿の塊のような出来物ができたとのことで来院されました。

元気や食欲に問題はなく、腫瘤を圧迫すると膿のような分泌物が出てきました。

 

〈治療〉

膿瘍を疑い抗生剤などの内服薬を開始しましたが治療に反応はなく、

腫瘤が徐々に大きくなってきたため、精査のためにCT検査を実施しました。

 

CT検査から、腫瘤病変が頭蓋骨を融解している様子(赤矢印)が確認できました。

 

CT画像を3D構築した画像です。頭蓋骨に穴が空いていてしまっている様子がよくわかります(赤矢印)。

内科治療で改善がないことも考慮し、手術で腫瘤摘出を実施することにしました。

 

手術前の全身麻酔を実施している様子です。腫瘤病変は以前より大きくなってきています。

 

腫瘤病変の切除を進めていくと、腫瘤が頭蓋骨を融解している様子がわかります。

 

腫瘤摘出後の写真です。

腫瘤によって皮膚、頭蓋骨が大きく欠損しています。

 

今回は腫瘤の切除範囲が広く、爬虫類は皮膚が硬く伸展しにくいため、

傷口は開放創として、二次癒合で皮膚を再生させることになりました。

写真では傷口を保護するために、創傷被覆材を貼り付けています。

 

術後1ヶ月以上たった写真です。徐々に傷口の欠損部位が再生されてきています。

 

〈診断〉

腫瘤の病理組織検査を実施したところ、扁平上皮癌と診断されました。

扁平上皮癌は、爬虫類ではトカゲやヘビで発生が多いとされ、瞼や口の周囲に発生することが多いようです。

 

扁平上皮癌は局所浸潤の強い悪性腫瘍で、今回のカメレオンモドキの症例では骨に腫瘍が浸潤している可能性が高く、

再発や転移の可能性があるため、注意深く経過観察していく必要があります。