ヒョウモントカゲモドキのコレステリン肉芽腫
ここ数年で、ペットとして爬虫類を飼育される方が増えてきています。
飼育数の増加に伴い、今まであまり知られていなかった病気の存在が明らかになってきました。
今回はヒョウモントカゲモドキのコレステリン肉芽腫の症例を紹介します。
<症状>
コレステリン肉芽腫の発生部位によって異なりますが、
臓器への圧迫で、食欲不振や呼吸器症状が出る場合もあり、
症状が進行すると腹膜炎で亡くなる場合もあります。
<原因>
コレステリン肉芽腫の発生要因として、
脂質代謝異常、ミネラルバランスの乱れ、肥満、遺伝的要因、食餌、加齢、外傷などの報告があります。
また、腫瘍や感染症といった何かしらの病変に付随して二次的に発生する場合もあるとされています。
<診断>
レントゲン検査や、エコー検査で腫瘤病変の確認を行います。
確定診断には、細胞診や病理組織検査が必要となります。
<治療>
腹膜炎がある場合には抗生剤の投与などを行いますが、外科的な摘出が第一選択となります。
この写真は食欲不振と便秘で来院された、雌のヒョウモントカゲモドキです。
レントゲン検査を実施したところ、体腔内に不透過性亢進領域(赤丸)がみとめられました。
変形卵や異物、腫瘍などの存在が疑われたため、探査開腹を実施することになりました。
全身麻酔下で開腹手術を実施したところ、体腔内全域に多数の白色腫瘤(青矢印)がみとめられました。
全摘出は困難と判断し、一番大きな腫瘤のみ摘出しました。
また、激しい腹膜炎による消化管の癒着によって、消化管内容物の通過障害を起こしていました。
これが食欲不振と便秘の一因になっていると考えられたため、癒着を剥離しました。
摘出した腫瘤病変です。
病理組織検査を実施したところ、コレステリン肉芽腫と診断されました。
手術後は便が出るようになり、食欲も戻って無事に退院されました。
しかし、体内には他にも腫瘤病変が存在していることから、今後再発の可能性も考えれられ、
注意深く状態を確認していく必要があります。
当院では今回の症例以外にも、ヒョウモントカゲモドキのコレステリン肉芽腫は複数例経験しており、
ヒョウモントカゲモドキでは発生の多い病気である可能性が考えられます。
特にこれといった典型的な症状はないため、体調面で異常があれば早めの受診を心掛けて頂ければと思います。